小谷・鬼無里境界 柄山(1338.5m)、物見山(1433m)、八方山(1685m) 2015年10月10日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:20 落合−−7:52 柄山峠−−8:11 柄山−−8:24 柄山峠(休憩) 8:36−−8:54 駒休めの頭(1340m峰)−−9:02 遊歩道を離れる−−9:19 1335m峰−−9:33 1290m鞍部(道に合流)−−9:43 1310m鞍部(道を離れる)−−10:05 物見山(休憩) 10:27−−11:12 1387m峰−−11:17 1370m鞍部から東斜面を下る−−11:24 八方沢−−11:41 支流の滝で行き詰まり戻る−−11:50 八方沢本流−−12:18 源頭−−12:35 尾根に出る−−12:48 1669m峰−−13:19 八方山(休憩) 13:40−−14:09 1669m峰−−14:24 尾根を離れる−−14:30 源頭−−15:41 踏跡入口−−15:43 崩壊した小屋−−15:57 温泉成分含む湧水−−16:00 滝の高巻き−−16:12 廃林道−−16:38 落合

場所長野県長野市(旧鬼無里村/白馬村/小谷村
年月日2015年10月10日 日帰り
天候晴後曇
山行種類籔山
交通手段マイカー
駐車場落合地区入口路側に駐車
登山道の有無落合〜柄山峠まではあり、他は無し
籔の有無八方沢を除き道無し区間は笹、根曲竹、灌木藪。特に1669m峰〜八方山山頂は強固な根曲竹
危険個所の有無高度な危険個所は無し。低度な危険個所としては八方沢滝の高巻道、痩せ尾根の藪回避で急斜面迂回など
山頂の展望どこも展望なし
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメントDJF氏の八方山柄山〜物見山を参考にして柄山〜八方山を周回。物見山〜八方山は八方山南岩壁を避けて一度八方沢に下ったため、尾根上を行けるのか不明。物見山北側尾根の藪はそれほど深くはなかったが、尾根東斜面は根曲竹藪。1669m峰〜八方山間は強固な根曲竹藪。山頂付近は蔓籔も混じってやっかい




数少ない駐車余地。背後は最初の人家 最初の人家手前の橋が峠道入口
何の記念碑? 整備されている
左岸を進む 階段あり
大倒木は沢まで下って巻く 崩壊地は強引に横断したが巻道あるらしい
落合沢右岸へ渡る。以降はずっと右岸を歩く 支流崩壊地。距離短くガレを横断
滝の高巻き道
石碑 傾いた橋
送電線巡視路分岐があるが沢沿いを直進 橋が流されて消失
また分岐があるがこれも直進が正解 橋無しだが水量少なく簡単に渡れる
沢を離れて緩やかな尾根を登る 缶がぶら下がっていた
峠まで1000m 送電鉄塔
峠まで500m 良好な道が続く
柄山峠付近の小さな沢。水が流れている 柄山峠。石像が2体ある
熊よけ? 柄山へ続く尾根は道は無い
目印が点在する 柄山山頂
最高地点に三角点あり 柄山峠へ逆戻り
柄山峠で休憩 送電鉄塔を通過
白馬三山 1340m峰(駒休めの頭)
1330m肩で登山道とお別れ 1330m肩の標識
きれいな切り口。明らかに人が入っている 境界標識
これも境界標識の1種か 八方山1669m峰(南峰)。南側にも崖あり
1335m峰。藪は笹、灌木が中心だがさほど濃くない 明瞭な獣道がある場所も
1290m鞍部付近。笹が濃い 熊の木登りの跡
1290m鞍部から登り返すと笹に埋もれた道が登場 道は1340m峰の東を巻く
目印が残る 1310m鞍部で道を離れて東へ登る
笹が主体だがまだまだ楽勝の濃さ 物見山直下
物見山のほぼ山頂(僅かに南側)。一気に藪が濃くなった 物見山山頂。ボロボロの青い紐が残る
物見山から八方山までの距離 北東尾根は灌木藪が中心
尾根が痩せると獣道登場 獣道は尾根直より西側。直上は笹藪
たまに灌木に遮られる でかい倒木
1330m鞍部付近 木の杭。これも境界標識か
1387m峰への登りは藪が濃い 西斜面の藪が薄くできるだけ迂回
境界見出標 1387m峰
目印は少ない 1370m鞍部へ下る
1370m鞍部から八方沢を目指す 東斜面は濃い根曲竹藪の連続
もう沢が近いが藪が濃い 八方沢に出た。思ったよりか細い
周囲は急傾斜の濃い藪斜面 3mほどの滝で行き詰った。ここは支流だった
少し下って右の斜面で高巻きに挑戦 斜面を見上げるが上部もかなりの傾斜
1669m峰。南東側から見ている 小尾根を越えて八方沢本流に入る
本流の方が支流より細く両側から藪が浸食する部分も 水は断続するが枯れている区間が長い
これくらい歩きやすい場所が続くといいのだが 1669m峰南岩壁を見上げる。基部は巻けそうな傾斜だった
これでもまだ沢の中 1580m付近で沢地形終了
根曲竹の斜面だがまだそれほど濃くない できるだけ隙間を狙って登る
尾根に出た。標高1630m 1669m峰。かなり濃い根曲竹に覆われる
1669m峰以降は濃い根曲竹の連続 1685m峰(八方山山頂)手前から蔓が絡んで最悪状態
1685m峰(八方山山頂)。藪の中 先人に敬意を表してヤキソバパン登場
1685m峰(八方山山頂)で休憩中 赤テープを残すが目にする人がいるのかどうか
藪の隙間から見た白馬岳 1669m峰北側の大きなダケカンバ
1669m峰再び 灌木の南西尾根を下る
往路で尾根に出た場所。ここから八方沢を目指す 根曲竹も下りは比較的楽
油断してたら藪で眼鏡のレンズが飛ばされた! 沢地形になったがまだ藪が・・・
徐々に藪が後退し歩きやすくなる 支流との合流点。左の草に覆われた方が本流
徐々に谷が広がるがたまに藪に突っ込む 標高1170m付近。流れが続くようになる
標高1150m付近で標識発見 標高1120m付近の目印
標高1070m付近の目印。薄いが右岸に踏跡登場 一応踏跡。まだ薄く見失いやすい
標高1060m付近で崩壊した小屋が登場 標高1050mで支流を越えると保安林標識登場
支流から登る個所にはフィックスロープ 丸木橋。この頃から踏跡は明瞭に
標高1020mで一度沢沿いに出る 沢沿いに出ると温泉成分を含む湧き水あり
標高1010m付近で滝の高巻き 眼下には滝
高巻きが終わるとジグザグに下り踏跡消失 ホイールキャップ。林道が近いはず
沢沿いに下ってみるが道無し 踏跡が消えた草籔をそのまま横断
廃林道終点に出た 林道崩壊地には明瞭な踏跡あり
折れた橋だが問題なく歩ける 徐々に現役林道に近づく
現役林道か 駐車余地到着


 長野県北部の旧鬼無里村と白馬村、小谷村境界の尾根上にはいくつかピークがあるが、奥裾花自然園から登山道がある奥西山〜東山を除き道はない。想像される植生を考慮すれば残雪期が望ましいが、DJF氏は無雪期にいくつかの山を登っている。彼はほとんどの場合を西側の白馬側から登っているが、地形図を見るとこの稜線は西斜面は急な場所が多く、できれば避けたいルートだ。

 今回は彼が2回に分けて登った八方山、物見山、柄山を1回で回ろうと計画した。これも先人の記録のおかげだ。私の場合は長野市から出向くので当然ながら鬼無里側からのアプローチを優先する。DJF氏は八方山の下山時にルートミスして八方沢を下ったが、ことのほか歩きやすい沢だったとのことで、これを利用すれば周回可能だろう。右回り/左回りどちらにするか悩んだが、秋の朝露で濡れた藪漕ぎの心配がない右回りルートとした。ここなら前半は柄山峠への登山道が利用可能なので、まだ藪が濡れた時間帯に藪に突っ込まないで済むだろう。

 今回は地形図だけでなくDJF氏の2本の記録も印刷してザックに突っ込んだ。

 長野市内から鬼無里は近い。カーナビの表示では道のりは40kmを切っていた。ただし国道はクネクネと曲がってスピードは出ない。以前は白馬まで通り抜けできなかったと記憶しているが、今はできるようになったようだ。奥裾花方面へ右に入って少し進み、左斜め上に入る狭い舗装林道に進む。ここが落合へと続く道だ。人家があるはずなのである程度手入れされた道だが、大型車は通行が難しいほど道幅は狭い。対向車とすれ違い可能な場所は少ない。冬場の車の通行は危険であろう。

 どんどん奥へと入っていくと人家が登場。この手前の橋が柄山峠入口。ここまで駐車余地はほとんど無かったが、橋の手前に車2台くらいなら置ける場所を発見。泥濘気味だが今はそれほど湿っていないので問題無し。雨が降ったらスタックしそうな場所だ。

 小さな橋で渡る沢が落合沢で、最初は左岸に沿って道が続く。入口付近は草ぼうぼうで先が思いやられたが、道が右に曲がり人家を回りこむと明瞭になり送電線巡視路の標識が現れる。そのまま左岸を高巻きするように歩くが途中で大倒木が登場。とても乗り越えられる規模ではないので巻くしかないが、河原方向に巻道ができていた。次は斜面大崩壊地が登場。岩盤むき出して落ちれば20mくらい滑落するので河原を巻こうかと思ったが、よく見ると少し残った土の個所に足跡あり。距離は短いし行けるかもと慎重に横断。落ちることなく横断し終わったが、普通はここは沢まで下った方がいいだろう。落合沢は水量が少なくどこでも歩ける。私は気付かなかったがDJF氏の記録によるとここは巻き道が存在するらしい。

 そこから進むと橋で落合沢の右岸へ渡る。DJF氏がコケた橋ではないようだ。以降は右岸を歩きつづける。途中で滝が登場するがここも右岸側に巻道が続いていた。その後は送電線巡視路が2箇所?ほどで分岐するが、いずれも沢沿いに直進が正解だ。

 やがて道は沢から離れて太く緩やかな尾根を上がり始める。沢沿いよりも尾根に取り付いてからの方が道は良好だ。途中、草に覆われた平坦な場所があったが、昔は畑か建物があったのかもしれない。この辺りで体が温まってTシャツに替えようと思ったら腕カバーがない! そうだ、洗濯して家に干しっぱなしだった。これがないと藪漕ぎの時に腕を保護できないので長袖を着用する必要があるが、私は汗っかきなのでこの時期でも長袖はきついなぁ。でも先週の藪で懲りているので長袖を着るしかない。

 登っていくと柄山峠まで1000m、500mの看板がある。送電線巡視路分岐がまだあったがいずれも無視して直進。柄山峠を目指す。峠直下では小さな沢に水が流れていて水を補給可能。ただし今回は1リットルの飲料を担いでいるので不要だ。

 柄山峠には2体の石像あり。昔はこの峠が白馬と鬼無里を結ぶ生活路だったのだろうが、今は国道がその役割を果たしているのでハイカーと送電線の巡視くらいしか使われていない静かな場所。峠には標高が書かれた杭があるがその数値が間違っている(たぶん1220mだった)。地形図によると1250mのはず。ここで高度計を校正する。

 まずは柄山山頂を目指す。ここから先は道は無く藪漕ぎだが、見上げると東斜面が藪が薄く歩きやすそうなのでそちらを登っていく。おっと、その前に薄い長袖シャツを着用。これは表面がツルっとしていて藪に引っかかりにくいやつ。薄い笹でもう朝露は乾いていて快適に歩ける。所々で目印が見られたので訪問者はそれなりにいるようだ。

 この植生が最後まで続けばいいがそうはいかない。途中で笹が濃くなったが今度は西斜面側の笹が薄いそうなので迂回。まあ、濃いといっても先週の城蔵山とは格段の差で、手で簡単に掻き分けられるレベルだ。

 笹の濃淡はあるが山頂まで笹藪は続いた。柄山山頂も笹と樹林に覆われて展望なし。三角点は最高点に埋まっていた。山頂標識は無かったが白い荷造り紐がたなびいていた。これでまずは1山。

 柄山峠に戻って休憩。週末だが誰も来ない。石像が収まった祠には耕運機の部品?がぶら下がっていて熊避け用に鐘のように叩いて音を出せるようになっていた。農村らしい光景か。

 出発。すぐに送電線を通過、しばし尾根上を進む。刈り払いは完璧で毎年手入れされているようだ。こんな道が八方山まで続けばいいのだが、残念ながら1340m峰を越えて1330m肩で西へと下ってしまう。1340m峰には「駒休めの頭」との標識が立っていた。そして1330m肩にはかなりボロボロになった「柄山峠の道」と書かれた標識があった。ここから道を外れて尾根上を北上だ。

 まだ標高が低いので藪は笹が主体で密度もそれほどではないので藪漕ぎもそれほど苦にならないレベルだ。この先も概ね西斜面は自然林、東斜面は唐松植林で、尾根上には境界標識らしい杭などが点在していたし、藪の中でもきれいな平面になった切り口の切り株をあちこちで見かけたので、少なくとも植林時にはこの尾根上には作業道が作られたらしい。ただし、今は藪に埋もれて道形は皆無だ。その代わり尾根が細くなった区間では獣道が登場する。

 笹+潅木の尾根が続くが笹は人の背丈を越えていないので先が見えるので読図は容易だった。ほとんど地図を見る必要はなかった。藪のレベルも多少の濃淡はあるが大きな変化は無く比較的歩きやすい部類だ。それにほぼ獣道が続くので大いに助かった。

 1335m峰を越えて1290m鞍部付近にかかると笹が一気に濃くなり本格的な藪漕ぎに突入。鞍部から登り返しは背丈を越えて特に深かった。しかし、意外なことに鞍部から僅かに登ったら明らかな道形が登場した。DJF氏の記録にもあった道に違いない。尾根を巻くように西から上がってきて、鞍部で尾根を乗り越えて東側に移るようだ。ここは東に移った直後の場所。今はかなり笹に埋もれているが周囲より明らかに笹が薄く、道の部分は斜面が削られて平らになっているので藪に慣れた人なら区別は比較的容易だ。道は尾根上ではなくこのまま東側を巻き続け、2つの1340m峰は巻いてしまう。そして次の1310m鞍部で道を離れて尾根を登る。DJF情報ではこのまま道を進むと物見山北側を巻いて山頂に向かわないとのことで、しかも北側は急斜面なので西から登るのが得策とのこと。先人の情報は非常に有難い。

 物見山西斜面はこれまでと同程度の藪の濃さで笹+潅木が主体。笹ができるだけ薄い個所を選んで斜面を登る。この尾根は広いので尾根直上にいるのか判断が難しいが、登りであれば適当に上を目指せば頂上に到着できるので心配は無用。逆に下りでは方向に要注意だろう。

 登りきって明瞭な尾根地形に到着。南北方向に伸びる尾根で、この尾根上だけは潅木と笹が濃かった。DJF氏の記録によれば山頂には青い目印紐が結ばれているとのこと。藪で見える範囲は狭いがこの周囲にはそれらしき目印はなかった。GPSの残距離を見ると北に数10mと出ているので濃い潅木藪を西から巻いて北へ進むとボロボロに劣化した青い目印発見! GPSの残距離表示もほぼゼロで物見山山頂に間違い無し。ここも藪に覆われて展望なし。山頂でしばし休憩。

 ここまではDJF氏の記録を参考に歩いたが、ここから八方山間は情報無しだ。基本的には尾根上を進む計画だが、八方山南峰(1669m峰)南西の標高1530m付近は等高線の混雑具合からして崖が予想された。巻いて登れるルートが見出せるかもしれないが、安全を考慮するとDJF氏が下りに使った八方沢にいったん下って沢を遡上するのが安全策だろう。無駄なく沢に下るには1370m鞍部付近がいいだろう。

 休憩を終えて北上開始。尾根は結構痩せていて特に西側が切り立っている。ただし潅木が生えているのでそれほど恐怖心はない。明瞭な尾根地形なので下りでも迷うことはなかった。もしかしたら物見山北側を巻く道が尾根上に合流するかと期待したがそれはなく、どうも物見山を巻き終わったら尾根の西側をトラバースするように道が続いているようだ。

 尾根上は西側は樹林帯、尾根直上と東側は笹や根曲竹に変わり、獣道は笹を避けて藪が薄い西側に現れた。ただし西側が切れ落ちた個所では獣道が消滅、根曲藪に突っ込んで進むしかない。でもまだ先週の城蔵山レベルの濃さではないので、この状態が続くのなら比較的楽に八方山に到着できそうだ。ただし崖の存在が無ければの話。

 1387m峰への登りは濃い根曲竹藪があって今までよりは苦労するが、相変わらず尾根は明瞭でルートに不安はない。たま〜に樹林の隙間から八方山西尾根が見下ろせたが、その南斜面には明瞭な林道が見えた。DJF氏が歩いた林道に間違いない。地形図に書かれていないのでどこまで伸びているのか不明だが、DJF氏の想像どおりに林道終点と物見山を巻く道が繋がっているのなら、危険個所を回避してこの先の1370m鞍部まで到達できるだろう。

 1370m鞍部は平坦で最低地点は明確ではなく適当に東斜面に下ることにしたが、その斜面は見事に根曲竹藪に覆われていた。尾根西側は相変わらず笹藪無しの樹林帯で歩きやすく対照的な植生だった。DJF氏が西側から登ってきたのは藪の観点からは正解だったようだ。突入するのが憂鬱になるような藪だが、この先に予想される崖を考えると安全第一。予定通りに八方沢向けて下っていく。高度が落ちれば歩きやすい樹林帯に変わるかと思ったがどこまでいっても根曲竹藪。支流の沢が出てきても周囲は竹藪で、八方沢手前では沢が隠れるほど藪が濃かった。

 標高1320m付近でやっと八方沢本流に到着。予想していたより沢は細く頼りないが水量は少ないのでどこでも渡渉可能。あとはこれを遡上すれば八方山南峰と言える1669m峰に安全に突き上げることが可能なはずだ。沢は結構な傾斜があり、この先に本当に滝等が無いのか心配になるくらいだ。両岸の傾斜はかなりきつく滝が登場しても高巻きして逃げるのは不可能だろう。雨が降ると急激に水量が増えそうな地形であった。

 流れに沿ってどんどん登っていくが傾斜もどんどん増していった。そしてとうとう3mほどの滝が登場。岩が乾いていれば登れそうだが、デコボコが少ない濡れた岩場は滑りやすく登れそうにない。沢の周囲も切り立った斜面で高巻きのため登るのは不可能。ここは下るのならロープが必要な場面でDJF氏の記録と合わない。どうも支流に入り込んでしまったようだ。いったいどこで間違えたのだろうか?

 少し下ってまずは左岸側の斜面が這い上がれる斜度に変わったので草ぼうぼうの急斜面を草を掴んで這い上がり、開けた場所まで出ると上部もかなりの急斜面。行けないことはなさそうだが岩肌も見えていて危険な匂いが。一方、反対側の右岸側の小尾根の向こう側にも谷がありそうな雰囲気で、そこは岩壁の直下を掠めて鞍部へと続いているのが見えた。どうもあちらが八方沢本流らしい。どこで間違えたのだろうか? ここまで目立った沢の出合は無かったように思うが。

 沢に戻って右岸側に取り付けそうな場所を探して草ぼうぼうの小尾根を乗り越えて西隣の谷へと降り立つ。先ほど谷と太さは大差なく頼りないくらい細いが傾斜はやや緩いように感じた。ここを遡上する。

 谷が細いので両岸から笹や草が大いにはみ出して谷を塞ぐ個所も多いが強行突破する。歩きやすい開けた河原のような場所も登場。たぶん正解だろう。徐々に傾斜がきつくなってくるが今度は滝は出てこない。右岸側にはスラブ状の岩壁末端が迫る。岩壁下部の傾斜はさほどではなく、物見山から続く尾根を進んだ場合はこの崖の基部を安全に巻くことができたかもしれない。

 さらに登ると水が無くなり枯れた谷を登り、徐々に地面の石も消えて土の谷へ変貌。そしてその谷も浅くなって斜面に吸い込まれ周囲と区別がつかなくなる。今までは谷の中は周囲より藪が薄かったがこれ以降はどこも同じなので藪が薄いところを狙って登っていく。藪は根曲竹が主体で潅木が混じるが、まだ隙間が多く激籔のレベルではない。

 同じ植生が続く斜面を登りきると尾根に飛び出す。現在位置がはっきりしないが、どうやら1669峰より南側に出たらしい。尾根上は根曲竹よりも潅木藪が優勢に変わるが、藪の濃さはまだ許容範囲だ。西斜面はそれなりに急ではあるが、この辺りだとまだ崖のように切れ落ちているわけではなく危険な匂いはしなかった。DJF氏がどの辺でこの尾根に飛び出したのかは窺い知るよしはない。帰りのために赤テープを残す。

 1669m峰が近づくと根曲竹が主体の藪に変貌し進行速度が低下する。高度が上がったので藪の濃さもぐっと上がり先週と同レベル。これと長時間格闘するのは骨が折れるが、今回は山頂までの数100mだ。地形図ではこの1669m峰が八方山山頂とも読取れるが、日本山名事典では北端の最高点ピーク1685m峰を八方山山頂としているのでそこが目的地だ。

 周囲で大きな立木のほとんどはブナだが1669m峰を僅かに下ったところに大きなダケカンバあり。これがDJF氏の記録に出てくる立派なダケカンバだろう。傾斜がなくなったのはいいが竹藪が濃いので速度は上がらず。藪が深く先が見通せないが尾根は一本なので外すとすぐに分かる。尾根の東西どちら側も藪の深さは同等で、藪が直立している尾根直上が一番藪漕ぎしやすい。

 ちょっとした二重山稜のような場所もあるが藪のレベルは同等だ。山頂手前で右手に土手のような顕著な高まりが登場するので藪を掻き分けて乗るが、ここから先は根曲竹に蔓が巻きついて最悪状態。蔓は粘りがあるので手で掻き分けられない。ここで久しぶりにナタが登場。おそらく10年以上使っていない代物だがさほど錆びていなかった。邪魔な蔓をナタで切断しながら進む。ただし切るにも時間と腕の力を使うので、踏み付け可能な蔓藪はナタを使わずに進む。

 山頂部は特に高みがあるわけではなく全体に南北にのっぺりした場所でGPSが無いとピンポイントで山頂を特定するのは不可能。蔓が絡んだ根曲竹藪にブナが点在している。残念ながら藪のため展望は無し。近くにDJF氏が残した黄色テープが無いか探したが見当たらず。微妙に場所がずれているのかもしれないが、これより北は低くなるが南は同じような高さが続くのでどちらも正解だろう。今回はブランドは違うがヤキソバパンを持ってきたのでDJF氏のヤキソバパン記録写真とともに撮影。2度とこの山頂でヤキソバパンが食されることはないだろう。天気は薄曇で風は弱く薄手のシャツでも寒くはなかった。

 帰りの時刻を考えるとあまりのんびりしていられない。少なくとも滝の高巻き個所は明るいうちに通過しておきたい。この藪では所要時間が読めないので余裕を見ておきたいところだ。1669m峰までの平坦区間は往路と同じく四苦八苦。DJF氏はよくも藪が濡れているときにこんなところを潜ったなぁと感心。まさに「潜る」の表現が相応しい根曲竹だった。

 1669m峰から潅木細い尾根に乗れば藪は多少薄まり、往路で目印を残した場所から東斜面へと突入。あとは適当に下れば自動的に八方沢源頭に出るはずだ。藪も下りなので楽勝だが竹に乗ると滑りやすいので何度か尻餅をついた。水が無い源頭に出れば周囲より藪は薄くなり、あとは下るに従って藪が減ってゆく。ただし場所によっては両側から藪がはみ出した区間も登場し、なかなか快適に歩ける場所とまでは言えない。沢の水は出たり涸れたりで長続きしない。まだ傾斜が急なので伏流しやすいらしい。

 標高1380m付近で太い沢に合流。こちらが私が往路で間違って入った支流だったが、分岐点で見るとどう見ても支流の方が太いし水は流れているが、本流は谷の幅が細いし枯れていておまけに草に覆われていて谷が分岐していることを認識すること自体が難しい場所だった。これでは間違えるのは当然で、無雪期に八方沢経由で八方山を目指す場合は最大の難関かもしれない。

 往路で沢に出た個所を通過しても同じような沢の状態が続き、沢は狭いが滝は無く水量も少なくて歩きやすい岸を適当に渡りながら下っていけばいい。

 標高1200m付近まで下ると水の流れが途切れないようになるがまだ水量は少なく沢のすぐ脇を右岸左岸と歩きやすい岸を選びながらどんどん進んでいく。標高1150m付近で水辺に目印が登場するがまだ踏跡の気配はない。沢が曲がった場所などはショートカットで樹林帯を通過したが踏跡なしだった。笹藪があるが上部の根曲とは比較にならないほど茎は柔らかいし密度は普通で歩きやすい。

 標高1120m付近で右岸側の立木に赤テープが登場し、この付近から不明瞭ながら右岸に踏跡が現れる。まだ沢の水量は少なく沢沿いに歩くことも充分可能だと思うが、踏跡の状態を確認するためにもできるだけこれを追ってみよう。まだ薄いので判別しにくいが時々テープが登場するので参考になる。

 標高1060m付近では笹の中に崩壊した小屋が登場。少なくとも建物は2棟あったようだ。支流の沢沿いにも崩壊した建物があった。その沢を横断すると踏跡は明瞭になり外す心配が少なくなった。保安林の標識も登場、人の気配が濃くなっていく。このまま右岸を高巻きかと思ったら1箇所で沢に下る場所があり、そこで温泉成分で岩に白い付着物が付いた湧き水発見。DJF氏の記録にも出てくるものだ。硫黄の匂いが微かにするが手を入れてみても暖かさは感じない。冷泉かな。再び右岸上に道が移り、以降は踏跡は沢に下ることはなかった。

 冷泉からすぐに急斜面の高巻きが始まり、この下に滝がある。道は明瞭だが幅は狭く人間よりも動物の利用が多いような感じだ。足場も緩いので滑らないよう慎重に進む。急斜面区間は100mくらいはあっただろうか。意外に長かった。それを通過してしまえばまた安全地帯。以降はもうドキドキするような場所はなかった。

 高巻きが終わるとジグザクに下っていくがここは下に行くほど道が薄く辿るのが難しくなっていくが、逆に言えばどこも植生は同程度なので踏跡に拘る必要はないだろう。下り終わって沢が近づくと踏跡が消滅し右岸側は草藪に覆われる。ここは沢沿いが正解かと湿地状の平坦地を横断するとタイヤのホイールキャップを発見。そうか、ここはもう廃林道終点間近なのだ。DJF氏の記録を読み返すとここは沢に下らず草藪を突っ切ると廃林道に出るとなっている。戻って草藪を横断すると頭上に段差あり。這い上がると廃林道終点だった。これで核心部は終了だ。

 廃林道は2箇所くらいで崩壊した場所があるが、明瞭な踏跡ができていてそれほど危険無く歩ける。折れ曲がった橋も問題無し。そもそもその沢の水量は少ないので歩きなら橋が無くても簡単に渡れるだろう。秋なので衣類に張り付く草の種が多いが根曲竹よりはずっといい。どうせ最後まで次々と張り付くだろうと毟り取るのは車に到着してからに。

 なかなか現役林道に切り替わらなかったが、別の廃林道と合流してから徐々に道の状態が良くなり轍が濃くなってきた。でも安心して車で入れるのは最後の人家の少し奥までだろう。落合には2軒の人家があったが今は空家のようだった。

 すぐに駐車余地に到着。明るい時間内に到着できたが出発から約10時間。大した休憩をせず厳しい藪漕ぎもあったので疲れた。手袋、ズボンに張り付いた草の種を取ってから着替えを済ませ、長野市内に向かった。


 最後にまとめ。八方沢は大きな危険個所はなく無雪期には利用価値大と感じた。少なくともDJF氏が八方山へと登った尾根よりも安全度は高い。雨の後など水量が増えているとやっかいかもしれないが、そうでなければ沢靴も不要。八方山へ登るのに最適だろう。ただし、あくまでも藪山。沢が終われば激藪が待っているのでご注意を。今回は物見山〜1669m峰間は後半は尾根伝いではなかったが、八方沢から見た感じでは岩壁帯は基部を巻けそうな気配であった。ここは下りではなく登りで挑戦した方がリスクは低いだろう。もしダメそうなら私と同じく八方沢へ逃げることが可能だ。さて、今後に挑戦者が現れるか・・・・

 

都道府県別2000m未満山行記録リストに戻る

 

2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る